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2017.07.22 (Sat)

探偵が早すぎる(下)


「探偵が早すぎる(下)」
井上真偽著
講談社タイガ
2017年発行

父親の死により五兆円もの遺産を相続することになった女子高生の一華。
父親の兄弟姉妹にあたる親族たちから遺産目当てに命を狙われることになります。
一華を守るため、使用人の橋田は旧知の探偵を雇います。
その彼は次々と親族たちの巧妙な殺人計画を実行前に潰していくのでした。
そして、一華の父親の四十九日。
数々の絢爛豪華な殺人トリック計画が彼女を襲いますが…。

趣向自体は上巻でわかっていたので、本下巻では犯罪計画が事前に阻止される爽快感を
虚心坦懐に味わいました。

一華に仕掛けられる殺人トリックは、日本ミステリ界の御大の有名作品や、
ポーストのアンクル・アブナー・シリーズのあの作品へのオマージュもあり
微笑ましいですが、主人公を次々と刺客が襲う王道的なエンターテインメントなので、
いささか漫画チックであるそれらのトリックがぴったり合ってます。
しかしトリックもさることながら、それよりトリックが発動以前に封じられてしまうので、
探偵によって語られる殺人計画の詳細と、
なぜそのトリックに気がついたかの説明が新鮮で面白いです。

さらにクライマックスの展開は予測不可能、なるほどこうきたか。
大満足のエンターテインメント、ミステリ好きには大変なご馳走でありましょう。

同じパターンは今後なかなか使えないでしょうが、奇才の井上真偽氏らしい、
ミステリ史に残るであろう意欲作でした。
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08:07  |  Book(ミステリ)  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2017.07.16 (Sun)

ドローン探偵と世界の終わりの館


「ドローン探偵と世界の終わりの館」
早坂吝著
文藝春秋
2017年発行

奇才・早坂吝氏の新刊です。

飛鷹六騎は原因不明の発育不全により、19歳でありながら身長130センチ、体重30キロ。
そんな彼はテレビドラマの主人公に憧れ、刑事になろうとしましたが、
体型のため試験を落ちてしまいます。
失意の彼は、ある大学の探検部の飛ばしていたドローンが
巨大で自分が掴まって飛べることを知り、そのドローンを使わせてもらうため、
その大学生でもないのに探検部に入部します。
やがて彼はドローンを駆使し凶悪犯を捕まえる、
ドローン探偵として世に知られるようになるのでした。

ある時、探検部は奇矯な老人の作ったヴァルハラと呼ばれる建物を
探検することになります。
あいにく六騎はちょうど犯人を捕まえるために両足を骨折していたのですが、
参加を希望。
仲間が探検している間に車の中で待機、
かわりにドローンを飛ばせて館の中を見てまわることにしたのです。
ところが、そのヴァルハラで連続殺人事件が起こるのでした。
外に出れなくなった部員たちと、事件を知りながら動けず歯がゆい思いの探偵。
やがて明らかになる驚天動地の真相。

嵐の山荘テーマですが、さすが奇才、すごい手を使います。

冒頭の「読者への挑戦状」でドローンを使ったトリックを当てろとありますが、
これは誰も当てられないでしょう。
真相を知った時感ずる虚脱感も氏の作品ならでは。

まったく新作を発表するたびにうならせてくれます。
08:23  |  Book(ミステリ)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.06.11 (Sun)

零の記憶 瞬く星と見えない絆


「零の記憶 瞬く星と見えない絆」
風島ゆう著
スカイハイ文庫
2017年発行

昨年刊行された「零の記憶」の続編です。
人間に興味がない高校教師鈴宮一貴と霊の記憶が見える生徒如月零。
前作の事件を通じ、ちょっと距離感がせばまったふたりの関係。
しかしまた事件が起こります。

零がクラスメートの水嶋遙たちと山登りをした当日、
合流するはずだった遙の弟、陵が行方不明に。
一方、彼ら兄弟の暮らす養護施設の職員岩屋依里の他殺死体が発見され、
陵もまた死体で見つかります。
警察は陵が犯人だと結論づけますが、それを受け入れられない遙のため、
零は霊の記憶を見、一貴とともに事件に深入りすることになります。

前作を凌ぐ面白い作品になっています。
事件の背景がよく出来ており、現代風なミステリとして読ませます。
このシリーズはどうにもつらい人間の感情による犯行を描き、
それに対する主人公たちもなかなかにつらいものを背負っているのですが、一貴と零の感情が少しずつ近づいていく描写が微笑ましく救いになっています。

読み応えある素敵なシリーズなので、もちろん続刊希望です。
08:21  |  Book(ミステリ)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.05.27 (Sat)

掟上今日子の裏表紙


「掟上今日子の裏表紙」
西尾維新著
講談社
2017年発行

忘却探偵シリーズ第九弾です。

あれれ、おかしいな。
いやあ、パターンからすると、今回は隠館厄介氏の登場しない、
今日子さんと警察官のやり取りが楽しい短編集のはずなのですが。
前作に続き、厄介氏が登場する長編でした。
さらに冤罪製造機とうたわれる警部も登場し、両パターンのコラボらしいです。

今回、忘却探偵掟上今日子さんが何と! 逮捕されてしまいます。
お金持ちのコインコレクターが自分の屋敷で死んでおり、
そばで凶器を握りしめた今日子さんが倒れていたのです。
現場は密室なので、今日子さん以外犯人はいない?
しかし1日しか記憶がもたない忘却探偵の今日子さん。
いったん寝てしまった以上、何があったかなんて覚えていません。
対応に困った警部は今日子さんの専門家…厄介氏を呼びます。
彼は今日子さんの代わりに事件を調べるのですが…。

というわけで、今日子さんが檻の中にいるとはいえ、緊張感のない、
今回も楽しい推理ゲーム。
のようで、なかなか切ないお話でもありました。
置手紙探偵事務所の警護主任である親切氏や、
以前厄介氏と因縁のあったジャーナリスト、囲井都市子さんも登場、
クライマックスの謎なぞもなかなかのもので、
今作はシリーズ屈指のバラエティ豊かな作品だったと思います。
しかも今回厄介氏のひらめきがすごい。
名探偵の側で何度もお手伝いした経験がものをいったのでしょうね。
島田荘司「龍臥亭事件」の石岡くん思い出しちゃいましたよ。
うるうる。



タイトルと内容に合わせた両面カバー仕様も楽しい。
うー、この今日子さんのフィギュアかポスターが欲しい(*^o^*)

次作は「掟上今日子の色見本」、冬発売予定です。
07:28  |  Book(ミステリ)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.05.21 (Sun)

探偵が早すぎる(上)


「探偵が早すぎる(上)」
井上真偽著
講談社タイガ
2017年発行

講談社ノベルスにおいて、早坂吝氏とならんで奇作を放ち続けている
井上真偽氏の新作、講談社タイガから刊行です。

近年では麻耶雄嵩氏が、自分では推理をしないで使用人に探偵させる貴族探偵を始め、
今まで見なかったユニークな探偵を次々に創造していますが、
今回の井上真偽氏の作品にもまたユニークな探偵―事件が起こる前に計画を看破し
犯行を防ぐ理想的な探偵が登場します。

まったくミステリマニアにとっては楽しい時代になったものです。

女子高生の一華は父親の死により五兆円もの遺産を相続することに。
父親の兄弟姉妹にあたる親族たちはその遺産目当てに一華を狙い、
彼女は車椅子の生活となります。
さらに送り込まれてくるであろう殺し屋たちから一華を守るため、
彼女の使用人の橋田は旧知の探偵を雇い、
その彼は次々と親族たちの巧妙な殺人計画を潰していくのでした。

そして、下巻においては一華の父親の四十九日を舞台に、
さらに絢爛豪華な殺人計画が彼女を狙うことになるようです。

いわゆる倒叙形式のミステリですが、謎の探偵がどのように殺人計画を察知し、
潰していくか、スリリングで胸のすくような展開が楽しい。
その探偵のキャラはまだ十分には把握できてませんが、
使用人なのに主人の一華に失礼なことを言う女性橋田や、一華の友人ふたりが魅力的で、
彼女たちのおかしさが炸裂してたハロウィンイベントにおけるエピソードが、
特におかしかったです。

さあ、7月発売予定の下巻が楽しみで仕方ありません。
08:53  |  Book(ミステリ)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.05.20 (Sat)

おいしいは正義


「おいしいは正義」
松田未完著
スカイハイ文庫
2017年発行

いかにもラノベ的なタイトルとイラスト。
しかし中身は一般的なラノベのイメージにおさまらないような、
入り組んだ事件を捜査する真面目な警察官の姿が感動的で、
またたいそう読み応えある作品でした。

杉元新一は交通課に所属する警察官。
本当は犯罪捜査がしたいのですが、過去に問題を起こしており、
そんな彼をみかねた仲間が、何かと捜査のお手伝いを頼んできます。

そんな彼がふと知り合ったフードジャーナリストの女性、
松樹いたると連続暴行事件に関わることになります。
やがて判明する被害者たちの共通点。
それは被害に合う前に口にした珍妙な食べ物?
ようやく犯人を捕まえたかと思ったら、事態は誘拐、そしてテロへと発展し…。

主人公がいちご大福にしか欲情できないという、変わった性癖が面白いのだけど、
もっとその変態的な場面を多く描いてもよかったように思います。
もひとつ、容疑者が判明する情報がかなり偶然的なので、ちょっと気になりました。

しかし、難点はそこだけ。
最初事件が早めに解決しそうだったので連作短編集かと思いきや、
様相が次々に変化し、全貌が捉えきれなくなる展開は、
ベテランミステリ作家のような構成力です。
真面目で正義感あふれる主人公と、
食べ物に詳しいだけではなく、
抜群の推理力を持ったヒロインの描き方も魅力的で、
楽しく読み終えました。
脇役の描き方もうまく、かなり質の高いエンターテインメントと思います。

この作者さんには今後も注目したいです。
おいしい小説でした。
09:14  |  Book(ミステリ)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.05.13 (Sat)

ダマシ×ダマシ


「ダマシ×ダマシ」
森博嗣著
講談社ノベルス
2017年発行

Xシリーズは半ダースしかない短いシリーズですが、今回いよいよ最終作です。

SYアート&リサーチの社員、小川令子のもとに上村恵子という依頼人が現れます。
結婚詐欺にあったらしく、その調査依頼。
調べるうちに他にも被害者が何人もいることがわかります。
しかし結婚詐欺を働いていた男は何者かに殺されてしまいます。

最後のエピソードとはいえ、これまでのように、淡々とお話が進んでいきます。
やがて事件は解決しますが、最後に登場人物の正体にサプライズが。
森作品らしく、いろんなシリーズとつながりが出てきます。

所長の椙田さんは行方をくらまし、小川さんが所長になることに。
アルバイトだった真鍋くんや永田さんにも大きな変化があり、
最終作らしいハッピーな終わり方をします。

ただ、ナオミという老婆の正体がわからない。
たぶん別シリーズに出てきてる人とは思うけど?

小川さんの身内にする「…だよう」って言い方好きだったのに、
終わっちゃって淋しいよう。
08:13  |  Book(ミステリ)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.04.22 (Sat)

人類最強のときめき


「人類最強のときめき」
西尾維新著
講談社ノベルス
2017年発行

人類最強の請負人、哀川潤の活躍を描いた最強シリーズ第3弾。

今回は新しく出来た島に三カ月滞在する依頼を受けたら、
なんと植物たちの攻撃を受ける羽目になる「人類最強のときめき」、
人類を滅ぼす可能性のある、面白すぎる小説を滅ぼす依頼を受ける
「人類最強のよろめき」の2短編に、短短編である「哀川潤の失敗」シリーズを3編収録。

人類最強が機械が作り出した究極の本と戦う「人類最強のよろめき」が、
めちゃくちゃエキサイティングでした。

今回収録の「哀川潤の失敗」はどれも京都府警の警察官、佐々沙咲が依頼人。
佐々さん懐かしー。

幸せの絶頂にいる女性がビルから飛び降りた事件を探る「死ぬほど幸せ」、
究極の探偵として作られた探偵ソフト、
デジタル探偵と勝負をする「デジタル探偵との知恵比べ」、
インチキしないのに不敗のギャンブラーとギャンブルで戦う
「不敗のギャンブラーと失敗の請負人」。

デジタル探偵の話が特に面白かったです。
最後の話以外は失敗とは言えないんじゃないかなーと思うんですがね。
まあ最後のにしたって失敗とはいえないだろうし。

今回も楽しませていただきました。





なお潤さんの名刺がついてました。
人類最強、名刺なんか持ってるんだなー。
07:19  |  Book(ミステリ)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.04.15 (Sat)

さらば愛しき魔法使い


「さらば愛しき魔法使い」
東川篤哉著
文藝春秋
2017年発行

魔法使いマリィシリーズ第三弾。
4短編収録のユーモアミステリです。

倒叙形式を用いてるので、最初から犯人が明かされています。
犯人はいつもイケメンで、主人公小山田刑事の上司である
39歳ナイスバディ婚活中の椿木綾乃警部は毎回惚れまくり。
一方、小山田刑事は犯人のちょっとした言動から怪しむと、
魔法使いであるマリィの力で自白させ、
あとは何とか証拠をつかみ追い詰めるというパターン。

マリィは魔法を使い箒で空を飛ぶ魔法使いの少女ですが、
普段は小山田刑事の家でお手伝いをしています。
二人の関係は回を追うごとに仲良くなっていき、今回はついに…。

相変わらず東川氏のギャグ混じりの文章は面白く、ニヤニヤしながら読みましたが、
今回は2話でクリスマス、3話でお正月とイベント月を迎えてることもあって、
小山田刑事とマリィの仲の進展具合には特にワクワクさせられました。

ところが第4話ではなんと、超スーパー科学雑誌の記者兼カメラマンに
魔法少女マリィの正体を知られ…。

さあマリィはどうなるのでしょう。

タイトルから想像できる終わり方ではあるけど、そっけない書かれ方なので、
多分まだシリーズは続くと思うのですが。

気になるところです。
08:20  |  Book(ミステリ)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.04.08 (Sat)

双蛇密室


「双蛇密室」
早坂吝著
講談社ノベルス
2017年発行

援交探偵上木らいちシリーズ最新作。

らいちの援交の相手のひとり、警察官の藍川は二匹の蛇の出てくる悪夢を
小さいころから見続けています。
実際赤ん坊のころ蛇に襲われたことがあるらしいのだけど、
その話を聞いたらいちは矛盾点を発見。
それが気になった藍川は実家を訪れ両親に話を聞くのですが、
そこで彼らから驚くべき告白をされます。
なんと藍川が生まれる直前に両親がかかわる密室殺人が起きていたのです。
しかもその事件には蛇が登場するのでした。
さらに1年後赤ん坊の藍川が高層マンションの27階で蛇に襲われる事件が。
こちらもいわゆる密室。
二つの密室事件をらいちが推理します。

相変わらずの援交探偵らしい身体を使った調査方法が導き出した意外な真実。
驚天動地のトリックと想定外すぎる事件の真相には読後口をあんぐり。
さすが奇才です。
途中までは乾くるみ氏の「Jの神話」みたいなのを想像していたのですが、
まったく違いました。

また端役にいたるまでのキャラ立ちが見事。
藍川の同僚刑事小松凪南のエピソードなんか大爆笑。

せつないラストシーンにらいちのセリフ「人はどうしようもない真実にぶつかった時、
探偵になるしかないのよ。真実を楽しまなきゃ」が心に染み入ります。
07:28  |  Book(ミステリ)  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑
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