「美少年椅子」
西尾維新著
講談社タイガ
2017年発行

美少年シリーズ第七作。

前作で指輪学園生徒会長になった美観のマユミ。
彼女に副会長の長縄さんがとんでもない案件を提出します。
指輪学園には美少年探偵団と呼ばれるいかがわしい組織があるらしい、
生徒会としては、適切に対処しないと…。
というわけで、美少年探偵団の一員である眉美さんは慌てて探偵団に話を持ち込みます。
美少年探偵団のアジトである美術室には簡単にはかたずけられない代物が
多数存在しており、さあ困った。
そんな折り、髪飾中学校の生徒会長札槻嘘からデートのお誘いがきます。
要件は以前の生徒会長選挙のとき暗躍した謎の人物のことだろうけど、
眉美は美少年探偵団のため、ある物を借りるため、髪飾中学校に潜入します。
授業をサボって、バニーガールの格好で!

というわけで、今回は緊迫感はあまりない、幕間話的なエピソードです。
髪飾中学校てのは生徒会長の権力で服装が男子はスカジャン、
女子はバニーガールという、素晴らしい学校です。

件の謎の人物は何者なのか。
目的は何なのか。
眉美と髪飾り中学校の生徒会長との話し合いで、
うすぼんやりとわかったようなわからないような。
今後明らかになるでしょう。

次巻は来年春発売予定「緑衣の美少年」。

あ、今回短編「放課後の道化師」がボーナスカットで収録されてます。

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「屍人荘の殺人」
今村昌弘著
東京創元社
2017年発行

第27回鮎川哲也賞受賞作。

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長で神紅のホームズこと明智恭介は、
探偵少女剣崎比留子の口利きで映画研究部の合宿に参加することになります。
昨年の合宿で何かが起こったらしく、脅迫状が出現しており、
事件の予感にときめく明智。
ところが現地では彼らの思いも寄らぬ事態が起こり、
学生たちとOBはペンションの紫湛荘に籠城することになります。
そこで起こる連続殺人事件。
二重の密室での不可能犯罪は誰が何のために行ったのか。

ミステリの常ではありますが、事件が起こるまでが少し退屈。
しかし事件後はぐんぐん引き込まれます。
気になったのは、クローズドサークルを構成する○○○を
現実的なものとして扱っている点。
もう少しリアリティのある設定がなされていたら、
なお良かったと思います。
もひとつ、タイトルにある「屍人荘」は舞台となる紫湛荘からとっているわけですが、
本文中「屍人荘」という言い換えが一度しか出てこないので印象的ではありません。
登場人物に何度か呼称させておくとなお良かったかなと思いました。

しかし、鮎川哲也「りら荘事件」オマージュなアレをはじめ数々のトリック、
ロジカルな謎の解明は本当に素晴らしい。
特にラジカセのアレは大好きです。
さらに名探偵の名前を二つくっつけた明智恭介の扱いがすごく斬新。
主人公の葉村と探偵役の比留子のステレオタイプではないキャラ設定もよく出来てます。

総じて大変な力作傑作で、これからが本当に楽しみな作家が誕生しました。

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「南柯の夢」
椹野道流著
講談社ノベルス
2017年発行

椹野道流(ふしのみちる)さんの法医学ミステリ、鬼籍通覧シリーズの最新作、
「南柯の夢(なんかのゆめ)」が刊行されました。

女子高校生が浴室で手首を切って死んでおり、
その横で親友の女の子が腕を組んで寄り添っていた…。
遺体の解剖を担当する伊月崇、伏野ミチルらO医大法医学教室の面々。
一緒にいた女の子は何もしゃべらず、死の背景がわからないままのある時、
伊月と同居人で幼なじみで警察官の筧兼継が久しぶりに再会した
かつての同級生の女性に頼まれ、蔵の片付けを手伝うのですが、
ひときわ大きな箱に入っていたのは…なんとミイラ?

ふたつの事件にいつもの面々が活躍します。

ミステリらしいトリックはないですが、人生のはかなさ、人間の生き方、
死に方の切なさを感じさせる佳作です。
専門家の作者ならではの解剖シーンは迫力があり、
それによって遺体の事情が判明していくシークエンスはいつもながら興奮します。

もちろん、ごはんを食べる場面がふんだんに挿入され、
生きていくことの大事さを教えてくれるのもいつも通り。

毎回楽しみなシリーズなのです。

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「マツリカ・マトリョシカ」
相沢沙呼著
角川書店
2017年発行

男子高校生の柴山くんの持ち込んだ謎を、
廃墟ビルに住む謎の美少女マツリカさんが解くシリーズ第三作。

前作で良いまとまり方をしたので、以後はないと思ってました。
だから今回久方ぶりに新作を読めて嬉し懐かし。
今回は長編です。

マツリカさんに高校の女子テニス部の天井にある顔にみえる染みを調べるように
命じられた柴山くん。
しかし、女の子の部室に入るわけにはいきません。
ところが知り合ったばかりの下級生の春日さんが協力してくれることになります。
深夜部室に忍び込む二人。
目的を達した後、「開かずの扉」と呼ばれる部屋で光が明滅するのを目撃。
次の日、その部屋でテニス部の美人生徒七里さんの盗まれた服が
トルソーに飾られているのが発見されます。
しかも現場は密室状態。
トルソーの事件には、同じ部屋で二年前に女生徒が襲われた密室事件が
関係しているかもしれないということで、柴山くんは親友の高梨くんや松本さんに
春日さんを加え、事件を解明しようと推理を重ねます。
しかしそんな折り、忍び込んだときに落とし物をしたことから、
七里さんに犯人として追求される柴山くん。
ピーンチ!
なんとか二つの密室事件を解かねばならなくなります。

というわけでマツリカさんの出番です。

相変わらず自分のことを紳士と言う柴山くんの視線や思考がいやらしいです。
登場人物たちの多重推理のそれぞれはなかなか興味深く、
日常の謎を追求する作品でありながら、ミステリの醍醐味があります。
ちょっとややこしいけど、ロジックのしっかりした作品でミステリ的興奮を味わいました。
誰かのために、という思いが登場人物のあちこちからあらわれて、
感動と切なさのつまった作品です。

いつか、またまた続編が読めるのを期待します。

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「黒猫シャーロック~緋色の肉球~」
和泉弐式著
メディアワークス文庫
2017年発行

シャーロック・ホームズのパロディ、猫版です。

綿貫恭平は生まれたときから一緒に暮らしてた猫のミケに死なれ、
思い出のつまった自宅にいたくなかった彼は大学進学を機に一人暮らしを始めます。
そんな彼は公園でパイプのように曲がったカギしっぽの黒猫と出会いますが、
なんとその黒猫は彼の境遇を言い当てます。
まるでシャーロック・ホームズのように!
いゃそんなことより、なんと恭平くんは猫の言葉がわかるのです!
ひとりと一匹はそれ以後猫のからんだいくつかの事件に関わっていきます。

もうね、猫と会話できるなんて、猫好きにはたまらないお話です。
収録された事件は「緋色の肉球」「四つの鳴き声」「ボス猫の醜聞」
「三毛組合」「黒猫失踪事件」。
「緋色の肉球」なんて最高なタイトルです。
「ボス猫の醜聞」にはもちろん「あのひと」…「あの猫」か。でてきます。
退屈を何より嫌う孤高の猫シャーロック。
音楽を愛し、コカインのかわりにマタタビを嗜む。
ホームズ聖典のエッセンスが絡められてるので、
シャーロッキアンの方々にもオススメの面白作品。
主人公の大家さんの名前が鳩村夫人てだけでニヤニヤがとまりません。

本書で完結な書き方ですが、シリーズ化してくれないかなあ。
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「カミサマ探偵のおしながき 二の膳」
佐原菜月著
メディアワークス文庫
2017年発行

居酒屋「とりい」を経営している御所雄里(ごしょゆうり)。
彼の店に同居している美女葛城コトハは探偵。
その正体は神様…葛城山のいちごんさん。
神様としての力を封じられた彼女は人間として生きているのでした。
酒が大好きなこの元神様は、調査成功の暁には
「とりい」でうまい酒を飲ませてもらうのを報酬にしてます。

第二弾の本作でも、報酬のお酒めあてに日常の謎に立ち向かうコトハと、
いやいやながらの助手役雄里。
三つの事件を解決します。

本シリーズの特色は雄里が居酒屋を経営してることもあり、
食べ物に関する蘊蓄が楽しいこと。
おせちの各お料理の意味に関する説明は、
なにも知らなかったのでとても勉強になりました。

続刊を期待します。
08/16|Book(ミステリ)コメント(0)トラックバック(0)TOP↑

「探偵が早すぎる(下)」
井上真偽著
講談社タイガ
2017年発行

父親の死により五兆円もの遺産を相続することになった女子高生の一華。
父親の兄弟姉妹にあたる親族たちから遺産目当てに命を狙われることになります。
一華を守るため、使用人の橋田は旧知の探偵を雇います。
その彼は次々と親族たちの巧妙な殺人計画を実行前に潰していくのでした。
そして、一華の父親の四十九日。
数々の絢爛豪華な殺人トリック計画が彼女を襲いますが…。

趣向自体は上巻でわかっていたので、本下巻では犯罪計画が事前に阻止される爽快感を
虚心坦懐に味わいました。

一華に仕掛けられる殺人トリックは、日本ミステリ界の御大の有名作品や、
ポーストのアンクル・アブナー・シリーズのあの作品へのオマージュもあり
微笑ましいですが、主人公を次々と刺客が襲う王道的なエンターテインメントなので、
いささか漫画チックであるそれらのトリックがぴったり合ってます。
しかしトリックもさることながら、それよりトリックが発動以前に封じられてしまうので、
探偵によって語られる殺人計画の詳細と、
なぜそのトリックに気がついたかの説明が新鮮で面白いです。

さらにクライマックスの展開は予測不可能、なるほどこうきたか。
大満足のエンターテインメント、ミステリ好きには大変なご馳走でありましょう。

同じパターンは今後なかなか使えないでしょうが、奇才の井上真偽氏らしい、
ミステリ史に残るであろう意欲作でした。
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「ドローン探偵と世界の終わりの館」
早坂吝著
文藝春秋
2017年発行

奇才・早坂吝氏の新刊です。

飛鷹六騎は原因不明の発育不全により、19歳でありながら身長130センチ、体重30キロ。
そんな彼はテレビドラマの主人公に憧れ、刑事になろうとしましたが、
体型のため試験を落ちてしまいます。
失意の彼は、ある大学の探検部の飛ばしていたドローンが
巨大で自分が掴まって飛べることを知り、そのドローンを使わせてもらうため、
その大学生でもないのに探検部に入部します。
やがて彼はドローンを駆使し凶悪犯を捕まえる、
ドローン探偵として世に知られるようになるのでした。

ある時、探検部は奇矯な老人の作ったヴァルハラと呼ばれる建物を
探検することになります。
あいにく六騎はちょうど犯人を捕まえるために両足を骨折していたのですが、
参加を希望。
仲間が探検している間に車の中で待機、
かわりにドローンを飛ばせて館の中を見てまわることにしたのです。
ところが、そのヴァルハラで連続殺人事件が起こるのでした。
外に出れなくなった部員たちと、事件を知りながら動けず歯がゆい思いの探偵。
やがて明らかになる驚天動地の真相。

嵐の山荘テーマですが、さすが奇才、すごい手を使います。

冒頭の「読者への挑戦状」でドローンを使ったトリックを当てろとありますが、
これは誰も当てられないでしょう。
真相を知った時感ずる虚脱感も氏の作品ならでは。

まったく新作を発表するたびにうならせてくれます。
07/16|Book(ミステリ)コメント(0)トラックバック(0)TOP↑

「零の記憶 瞬く星と見えない絆」
風島ゆう著
スカイハイ文庫
2017年発行

昨年刊行された「零の記憶」の続編です。
人間に興味がない高校教師鈴宮一貴と霊の記憶が見える生徒如月零。
前作の事件を通じ、ちょっと距離感がせばまったふたりの関係。
しかしまた事件が起こります。

零がクラスメートの水嶋遙たちと山登りをした当日、
合流するはずだった遙の弟、陵が行方不明に。
一方、彼ら兄弟の暮らす養護施設の職員岩屋依里の他殺死体が発見され、
陵もまた死体で見つかります。
警察は陵が犯人だと結論づけますが、それを受け入れられない遙のため、
零は霊の記憶を見、一貴とともに事件に深入りすることになります。

前作を凌ぐ面白い作品になっています。
事件の背景がよく出来ており、現代風なミステリとして読ませます。
このシリーズはどうにもつらい人間の感情による犯行を描き、
それに対する主人公たちもなかなかにつらいものを背負っているのですが、一貴と零の感情が少しずつ近づいていく描写が微笑ましく救いになっています。

読み応えある素敵なシリーズなので、もちろん続刊希望です。
06/11|Book(ミステリ)コメント(0)トラックバック(0)TOP↑

「掟上今日子の裏表紙」
西尾維新著
講談社
2017年発行

忘却探偵シリーズ第九弾です。

あれれ、おかしいな。
いやあ、パターンからすると、今回は隠館厄介氏の登場しない、
今日子さんと警察官のやり取りが楽しい短編集のはずなのですが。
前作に続き、厄介氏が登場する長編でした。
さらに冤罪製造機とうたわれる警部も登場し、両パターンのコラボらしいです。

今回、忘却探偵掟上今日子さんが何と! 逮捕されてしまいます。
お金持ちのコインコレクターが自分の屋敷で死んでおり、
そばで凶器を握りしめた今日子さんが倒れていたのです。
現場は密室なので、今日子さん以外犯人はいない?
しかし1日しか記憶がもたない忘却探偵の今日子さん。
いったん寝てしまった以上、何があったかなんて覚えていません。
対応に困った警部は今日子さんの専門家…厄介氏を呼びます。
彼は今日子さんの代わりに事件を調べるのですが…。

というわけで、今日子さんが檻の中にいるとはいえ、緊張感のない、
今回も楽しい推理ゲーム。
のようで、なかなか切ないお話でもありました。
置手紙探偵事務所の警護主任である親切氏や、
以前厄介氏と因縁のあったジャーナリスト、囲井都市子さんも登場、
クライマックスの謎なぞもなかなかのもので、
今作はシリーズ屈指のバラエティ豊かな作品だったと思います。
しかも今回厄介氏のひらめきがすごい。
名探偵の側で何度もお手伝いした経験がものをいったのでしょうね。
島田荘司「龍臥亭事件」の石岡くん思い出しちゃいましたよ。
うるうる。



タイトルと内容に合わせた両面カバー仕様も楽しい。
うー、この今日子さんのフィギュアかポスターが欲しい(*^o^*)

次作は「掟上今日子の色見本」、冬発売予定です。
05/27|Book(ミステリ)コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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Author:暗ヲ
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