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2011.10.22 (Sat)

長谷川一夫の「忠臣蔵」


「忠臣蔵」
1958年大映映画
監督:渡辺邦男
大石内蔵助:長谷川一夫
浅野内匠頭:市川雷蔵
吉良上野介:滝沢修
岡野金右衛門:鶴田浩二
赤垣源蔵:勝新太郎

忠臣蔵は登場人物が多いためエピソードも多く、また原作によっては
お話の視点が違ったりしますから、なかなかバラエティに富むのですが、
反面映画やテレビスペシャルくらいの時間枠ではどうしても焦点をしぼらなければ
いけなくなります。
それだけにこの使い古されたお話は何度映像化されても新鮮に観れて
面白いといえます。

さてこの映画の内蔵助は長谷川一夫、上野介は滝沢修。
このふたりは数年後の1964年にNHK大河ドラマ第二作「赤穂浪士」においても
同じ役を演じることになります。
長谷川一夫の内蔵助は柔らかく、そしてなかなか艶っぽく、
また滝沢修の上野介はあくまで憎たらしく、赤穂浪士の復讐に怯える小心さは
描かれません。

内匠頭は当時大映トップスターだった雷蔵だけに、前半30分は彼のひとり舞台です。

内蔵助の長谷川一夫が出番が一番多いのはもちろんですが、
ついで目立つのが岡野金右衛門役の鶴田浩二であります。
岡野金右衛門といえば吉良邸を工事した大工の娘と仲良くなり図面を手に入れる
役回りが一般的ですが、この作品でも大工の娘である若尾文子と恋仲になります。
まだまだ若い鶴田浩二は甘いマスクと声でなかなかに粋で色っぽくグッときます。

もうひとり今でも知られてる大スターでは勝新太郎が出演しておりますが、
こちらは座頭市以前でまだあまり魅力がありません。
赤垣(赤埴)源蔵役で、討ち入り前に兄に別れを告げに行くもあいにくの不在に、
かわりに兄の羽織にむかって別れを告げるシーンはもちろん描かれます。

さて多門伝八郎といえば通常、内匠頭を取り調べ、政治的判断により
上野介に何らおとがめがないのに文句を言い、内匠頭切腹の際には同情し
片岡源五右衛門にこっそりあわせてやる、といった役回りで終わり、
それ以後は登場しないのですが、この映画では赤穂浪士に影で協力する役で
ところどころ顔を出します。
演じるは時代劇スターで名を馳せた黒川弥太郎。
苦みばしった良い男であります。

あとは千坂兵部の小沢栄太郎が味のある演技で魅せてます。

女優陣では内匠頭の奥さん山本富士子や内蔵助の奥さん淡島千景など
そうそうたる顔ぶれのなかで、特に印象的なのは千坂のスパイをつとめる京マチ子。
内蔵助の行動を探るうち彼に惚れてしまい、不幸な末路を迎えます。

ところで、史実によると実際は使われなかったらしいけど映像では効果的なので
よく使われる陣太鼓ですが、この映画では内蔵助が赤穂浪士たちに事前に見せる
シーンまであり、特にクローズアップされています。

この映画、いろいろユニークな点もあり面白く観れますが、なにより長谷川一夫、
鶴田浩二、そしてもちろん女優陣の、それぞれの色っぽさが印象に残りました。

次は千恵蔵の忠臣蔵が観たいのお。
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2011.08.21 (Sun)

赤穂城断絶


「赤穂城断絶」
原作・脚本:高田宏治
音楽:津島利章
監督:深作欣二
大石内蔵助:萬屋錦之介
吉良上野介:金子信雄
浅野内匠頭:西郷輝彦
柳沢吉保:丹波哲郎
不破数右衛門:千葉真一
多門伝八郎:松方弘樹
小林平八郎:渡瀬恒彦
1978年東映映画

深作欣二監督の映画は代表作「仁義なき戦い」を始めほとんど観てなくて、
観たことある作品といえば、オール外人キャストの「ガンマー第3号宇宙大作戦」とか、
主役が外人の「宇宙からのメッセージ」とか、
かなり外人キャストの「復活の日」とかのSF作品、
あとはDVDで時代劇の「必殺4」と「柳生一族の陰謀」だけ。
SF作品観てたころには良さがわからなかったのですが、
最近DVDで時代劇観ると、面白い映画撮る監督さんだったんだなあと
今更ながら思うのでした。

さて、前に書いた松本幸四郎の忠臣蔵より先にこの「赤穂城断絶」を観たのですが、
魅力はなんといっても、錦之介=内蔵助の濃い・重い・毒々しく・脂ぎってる・
存在感につきるといっても過言ではないでしょう。
重量感のあるダイナミックな演技が赤穂浪士たちも、
映画を観る者も、強引に引っ張っていきます。

柳沢吉保が丹波哲郎ですが、同役の役者としては、わたしの世代では
NHK大河の「元禄太平記」における石坂浩二が印象に残ってます。
彼は後年「四十七人の刺客」でも同じ役を演じてますが、
「赤穂城断絶」においては内蔵助が何を考えてるかわからない、一癖も二癖もある、
というより怪物錦之介ですから、知恵者同士の対決を実現するには
吉保は“霊界の使者”丹波哲郎でなくてはならなかったでしょう。
実際ふたりの頭脳合戦シーンは迫力があります。

出演者クレジットの二番目にくる千葉真一は不破数右衛門の役で
得意のアクションを見せます。
ただし殺陣というよりはどうしても殺人拳に見えてしまうのがご愛嬌です。

その数右衛門と最後吉良邸で一騎打ちをする小林平八郎役渡瀬恒彦も、
目を向いてダイナミックな剣劇を見せます。

この映画での多門伝八郎はアブラギッシュな松方弘樹が演じているだけあって、
有島一郎とは違いなかなか熱血漢で、内匠頭のみ処分するのは不公平と、
吉保相手にかなりしつこく食い下がります。

なお三船敏郎が吉良邸の隣人で赤穂浪士に協力する土屋主税役で、
出番がものすごい少ないながら目立つ得な役を演じております。

全体的に熱い、ダイナミックな、いかにも東映的なアクション忠臣蔵で、
幸四郎の東宝版とは真逆のスタンスでこれも大いに楽しめました。
09:47  |  DVD(時代劇)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2011.07.05 (Tue)

幸四郎の「忠臣蔵」


「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」
脚本:八住利雄
音楽:伊福部昭
監督:稲垣浩
大石内蔵助:松本幸四郎(先代)
吉良上野介:市川中車
浅野内匠頭:加山雄三
1962年東宝映画

幸四郎は幸四郎でもラ・マンチャの人ではなく、
そのお父さんにあたる八代目松本幸四郎であります。

この方は歌舞伎でも内蔵助を得意にしていたようですが、
映画でも2度演じております。

その新しい方の「忠臣蔵」をDVDで観ました。

幸四郎他当時の東宝俳優陣総出演的な豪華な配役です。
この題材はキャラクターも多く、いきおいオールスターキャストになり、
誰が誰を演じるか楽しみのひとつです。
ランニングタイムが207分ということで2枚のDVDに収録されております。

さて、この「忠臣蔵」、情緒的な面を丁寧に描き、
文芸色豊かに作られた作品と思います。
これはこの前に観た忠臣蔵ものが深作欣二のアクションに重きを置いた
「赤穂城断絶」だったから余計そう感じるのかもしれません。

内匠頭の切腹シーンは実際に腹を切るところまで撮されませんし、
クライマックスで内蔵助が吉良上野介を刺すシーンもありません。
最後の赤穂浪士の切腹も省かれます。
チャンバラシーンも派手ではなく、そのようなダイナミックな面白さよりも、
むしろ歌舞伎役者も多く使い、演技面を充実させる方向性で作られていると感じます。

幸四郎の内蔵助はまじめでおだやかそうで、映画としては面白くないかな、
と危惧しましたが、歌舞伎的といえばよいのか歌舞伎町と歌舞伎揚を除いて
歌舞伎を知らないのでわかりませんが、指の先まで神経の行き届いているかのような
細かい演技や微妙な表情が実に味わい深く素晴らしいです。

上野介の市川中車(八代目)は、1971年テレビドラマの「大忠臣蔵」でも
同役を演じますが、憎々しさと赤穂浪士の仇討ちを恐れての小心さを
見事に演じ、けだし適役。
歌舞伎系では、現在の幸四郎、猿之助、吉右衛門も出演しております。

「大忠臣蔵」で内蔵助を演じることになる三船敏郎は出演者クレジットのトリですが、
赤穂浪士に陰から協力する、架空の人物ではあるけど忠臣蔵にはたまに登場する
俵星玄蕃役で、いつもながら得な役。
ちなみにこの映画では柳沢吉保(山茶花究)や千坂兵部(志村喬)は
残念ながら見せ場のない印象。
多門伝八郎を演じる有島一郎は有島一郎らしく(笑)、
「だって喧嘩両成敗でしょ、吉良殿にもお咎めをしなくちゃだわ」
なんて風には決してねばりません。
寺坂吉右衛門(加東大介)は病気で集合場所まで辿り着けない設定。

女優さんでは、大石りく役の原節子の最後の映画出演作であります。
そしてなんといっても浮雲太夫役新珠三千代が凛として美しくたまらないです。

音楽が伊福部先生ですが、怪獣映画に使われるような曲が
時代劇にもぴったり合っています。
討ち入りのシーンにかかる曲がゴジラのテーマを思い出すメロディで笑えます。

監督の稲垣浩は時代劇を数多く撮っている名匠ですが、
以前に東宝特撮の「日本誕生」を観て感銘を受けました。
いつか5大スター(三船、裕次郎、勝新、錦之介、浅丘ルリ子)共演時代劇
「待ち伏せ」を観てみたいものだと思っております。

さて、いままで忠臣蔵で見たことのないシチュエーションがいくつか。
ひとつは討ち入りの際の打ち合わせで、火の用心を第一に心掛け、女子供、
抵抗しない者には一切構わぬよう言い渡されます。
実際忙しい討ち入りのさなかにも、火鉢? に水をかけて消す律儀さです。

もうひとつ、なかなか上野介がみつからない。
ここで赤穂浪士は上野介が見つからない場合はそろって切腹をする約束を確認します。
内蔵助はみんなでどうするか話し合おうと笛を吹かせようとするまさにその瞬間、
上野介発見の別の笛の音が響き渡るのでした。

動と静のタイミングがまるで舞台劇のように移り変わり、
独特のリアリティを演出しているように感じます。

忠臣蔵という題材は内蔵助を演じる役者のキャラクターで方向が決まると思いますが、
この映画、幸四郎の静かな演技が味わい深い、しみじみとした余韻が残る
文芸的雰囲気の良作と思いました。

長いので、おせんべかじりながら小出しに観るのも良いと思います。
19:36  |  DVD(時代劇)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
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