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2014.07.05 (Sat)

十二人の抹殺者


「十二人の抹殺者」
輪堂寺耀著
日下三蔵編ミステリ珍本全集02
戎光祥出版
2013年発行

日下三蔵氏というと歴史に埋もれている珍しいミステリを蘇えらせている
素晴らしい編集者の印象と、喜国雅彦氏の本棚探偵シリーズに描かれているように
家中膨大な本が溢れている素敵なコレクターの印象とありますが、
まさか「日下三蔵編」でこの未知の本を読む気になったわけではありません。
この本の探偵役が江良利久一(えらり・きゅういち)…エラリー・クイーンをもじった
名前なのが興味を惹いたのでした。

で読むことにしたのですが、長い!
長編「十二人の抹殺者」と中編「人間掛軸」が収録されてますが、
両方で500頁強、しかも二段組みとゆー。

「十二人の抹殺者」
ある親戚同士の二家が隣同士に仲良く家を構えてて、
一方に六人、もう一方に六人とお手伝いさんが住んでます。
双方の家族計十二人に殺害予告めいた年賀状が届くのが発端。
やがて実際に殺人が起こり、それを捜査する警察を嘲笑するように
景気よく次々と家族が殺されていくのでした。

とにかく登場人物が多く、誰がどっちの家の誰かわかりにくいのに、
登場人物表がついてない。
密室殺人がいくつも起こるわりに家の間取り図もついてないのも不親切。
ではあるけど、読み進めていくと、慣れてきて、むしろスピーディーなお話の展開に
目を離せなくなります。

1960年の作品で、犯罪者の劣性素質が遺伝するという考え方や、
愛するひとのことを思い続けていると、そのひとの子ではないのに、
胎教によって容貌がその愛するひとに似てくるといった描写に古さを感じますし、
また沢山出てくるトリックは目新しいものではないですが、
フウダニットとしてはかなり面白いです。

どっかの小説でみたような、いろいろな殺人のパターンやいろいろな密室の
パターンが網羅され、マニアックな構成ですが、
それはうまく機能していないような気がするのであまり気にしないで良いでしょう。

「人間掛軸」
1952年の作品。
光風園という、松の家、菊の家、梅の家、蘭の家、竹の家に
一族が分散して住んでいる場所で縊死に見せかけた殺人が次々に起こります。
佐藤警部や江良利久一が到着してからも、
ものすごい勢いで事件が起こり続ける、その高速殺人たるやすごいです。

こちらの作品は登場人物表と光風園の略図がついてて親切。

密室殺人の状況から、たぶんあれなんだろなーと思ったら、
やはり横溝の某有名作みたいなあれでした。

本作でも犯罪の遺伝が問題になったり、
警察官が合図にピストルをパンパン撃つ場面なんかもあって、
いいんかなーと思いますが、細かいことはさておいて、ぐいぐい読ませます。
細かい伏線が生きてて感心します。
面白いです。

ただ、ラストの名探偵の不道徳かつ羨ましすぎるシーンはなんだかなー。
いいんかなー。
まあいっかー。

そもそも幻の作品なんてのは、つまんないからこそ歴史に埋もれてたんだ、
くらいに思ってたのですが、読んでみたらなかなか魅力的なのでびっくり。

江良利久一ものは、光文社文庫のアンソロジーにもう一作あるようなので、
今度探してみよう。
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