2017年08月 / 07月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09月

2014.07.19 (Sat)

生首殺人事件


『「妖奇」傑作選』
甦る推理雑誌④
ミステリー文学資料館編
光文社文庫
2003年発行

前に読んだ輪堂寺耀の「十二人の抹殺者」(「十二人の抹殺者」「人間掛軸」収録)
(→コチラ)が面白かったので、それ以前にこのアンソロジーに収録されていた
同じ作者の「生首殺人事件」も読んでみることにしました。

本書には1947年創刊の探偵小説雑誌「妖奇」に掲載された作品を
いくつか収録してありますが、その内容は、短編で香住春作「化け猫奇談」、
高木彬光「初雪」、宇桂三郎「煙突綺譚」、北林透馬「電話の声」、
そして長編で「生首殺人事件」です。
「生首殺人事件」は340頁ほどあり、この文庫本のほとんどを占めております。短編もそれぞれなかなか面白い作品群でしたが、
なんといってもわたしの最大の興味は「生首殺人事件」にありました。
ちなみにこれ、輪堂寺耀名義ではなく、尾久木弾歩名義で1951年の作品。
「十二人の抹殺者」「人間掛軸」と同様エラリー・クイーンをもじった
江良利久一が探偵役。

江良利久一の新婚の奥様千鶴子は友人で銀行家の娘純子から
クリスマス・イヴの集まりに招かれます。
江良利夫妻が出かけていくと、純子の家には家族のほか、歌手や探偵作家、
家族の愛人や婚約者がおり、複雑な人間模様を呈しております。
そんななか、ピアノのなかから「生首所望」のカードが見つかり、
やがて一家の長男が密室のなかで首のない死体で発見されます。
すぐに警察が呼ばれ、江良利の叔父の佐藤警部をはじめとした捜査陣は
取り調べを始めますが、彼らを嘲笑うかのように、第二、第三の密室首なし死体事件が
出来するのでした。

正直トリックは目新しいものではありませんが、
語り口がうまいのか夢中で読ませます。
本作では本家クイーンにならい「読者への挑戦状」まで挿入してある
本格テイストです。

「人間掛軸」で名前のみ登場した名探偵夫人の千鶴子さんが、
探偵ともども事件に巻き込まれ、あまつさえ危ない目にもあう展開にドキドキ。
探偵の奥方が危険な目にあう小説には乱歩の「人間豹」がありますが、
もちろんあんなエロエロではありませんが。

気になるのは、密室に被害者と一緒にいた千鶴子さん、
また別のある殺人で被害者と最後に会話した名探偵は最重要容疑者だと思うのだけど、
なぜ警察から少しも追及されないのだろう。

ちなみにこの名探偵はなかなか怪しからん男でありまして、
奥さんの目の前で純子の兄嫁ならびに純子とダンスをするのだけど、
楽しみながら、『千鶴子よ、悪く思うな、これも妻として女としての修業なのだから』
なんて考えたりするのです。
また、女中の顔が美人ではあるが間の抜けた所があり、
飽きの来るような顔立ちで、『こんなのは白痴美と言うのかも知れない』と思い、
理智的に美しさを持つ奥さんと較べちゃうのです。
それでいて、ある妖艶な女性から秋波を送られると、
抱き締めて接吻までしてしまうのです。
「人間掛軸」のラストでも似たシチュエーションがありましたが、
どうも頭脳は優秀だけど、女性に対する感情と行動はトンデモ男のようです。
誘惑に弱い江良利探偵の活躍をもっと読みたいです。
ところで銀行家のおやじさんが、歌謡を娯楽と切り捨て、
探偵小説を芸術と称えるんだけども、これは探偵小説作家としての
作者の思いの代弁なんでしょうかねえ。。
関連記事
スポンサーサイト
11:08  |  Book(ミステリ)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

*Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://kusopanda.blog130.fc2.com/tb.php/1658-962e5f31

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |