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2015.10.04 (Sun)

新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険


「新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険」
島田荘司著
新潮社
2015年発行

島田荘司氏の新作はシャーロック・ホームズのパスティーシュ。
480頁ほどある大作ですが、読み応えありました。

軍医としてのインドでの生活の中で病魔に冒されたワトソン博士は
イギリスに帰国、シャーロック・ホームズと出会い共同生活を送ることになります。
やがてホームズは名探偵としての名声を博し、
スコットランドヤードのコンサルタントとして事件を解決するようになるのですが、
そんな矢先持ち込まれた赤毛組合事件。
これを見事に解決するホームズ。
と、ここまでは正典の「緋色の研究」や「赤毛組合」の物語に沿っているのですが、
問題はそのあと。
なんと難攻不落の刑務所から赤毛組合事件の犯人が脱獄してしまいます。
ところが肝心のホームズはコカイン中毒で正気をなくし病院送り。
しかもワトソン博士の恋焦がれる女性
(死んだ兄の未亡人)が行方不明になってしまいます。
かてて加えて編集者からはホームズ物の新作を早く書いてくれとの矢のような催促。
そんな中でホームズを当てにできないワトソン博士は
単身義姉を助けに乗り出すのですが…。

正典のホームズ物語に書かれなかった裏の事情を描き、
それに正典のエッセンスを見事に組み入れ再構成した傑作です。
そんなわけで、個人的にはパスティーシュというより、
むしろリブートというべき作品かなと思いました。

特別な才能を持っているわけではない主人公が一所懸命頑張って
何とか事態を解決する展開は島田氏の「龍臥亭事件」や「犬坊里美の冒険」を
思い起こします。
天才探偵でない人物を活躍させることにより沸き起こる感動は本作も同様。
ワトソン博士の恋愛物語が非常にせつなく、胸を打ちます。

また随所に散りばめられたユーモア溢れる描写も楽しく、
本書はホームズ愛好家はもちろん興味を持つでしょうが、
むしろ島田荘司ファンにお勧めしたいと思いました。
不可解ななぞなぞ話をわくわくと聞いているときのホームズの仕草は、
昔の御手洗さんそっくりだし。
いや、どちらにも、いや、すべてのひとにお勧めしたい。
つまりとっても面白い小説ということです。

正典で「四つの署名」に登場するサディアス・ショルトーが
やはり財宝話を伴って出てきますが、聞き覚えのある名前が出てくるたびに、
調べ直さなきゃならなかったのが面倒といえば面倒。
なにせホームズ物語を読んだのはずいぶん昔のことなので、
はっきりとした記憶がないのです。
正典ホームズ読み終わったばかりのひとが読むと、
面白さがビビッドに伝わるのではないかな、
と思いました。

なお「這う人」や「まだらの紐」執筆に関する編集者とのやりとりが
めちゃくちゃおかしかったです。
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