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2016.03.19 (Sat)

涙香迷宮


「涙香迷宮」
竹本健治著
講談社
2016年

竹本健治氏の作品で多分最も有名なシリーズ探偵、牧場智久が活躍する最新作です。
大作で単行本のため、もしかすると牧場くんソロで登場か、と思ったのですが、
安心してください、ちゃんとガールフレンドで剣道美少女の武藤類子ちゃんも
出てきますよ。
今回優秀なワトソン役を演じています。
ルイコウとルイコの言葉遊びも楽しい。

天才囲碁棋士の智久が旧知の警察官に頼まれて同行した事件現場。
ある旅館で碁盤につっぷして殺されている老人。
智久は現場の碁石の数に着目するも、事件解明は進まず、そんななか、
智久は類子とともに黒岩涙香研究家の麻生に誘われ、
涙香の隠れ家の発掘調査団に参加する。
その隠れ家に残された48首のいろは歌に隠された暗号を解こうとするメンバーたち。
やがて起こる殺人。
折からの台風で、現場は嵐の山荘状態に…。

碁や連珠の詳しい説明や歴史はデビュー早々のゲーム探偵シリーズを思い起こします。
すなわち「囲碁殺人事件」「将棋殺人事件」「トランプ殺人事件」ですが、
わたしはこれらのゲームのルールを知らないので、苦労して読んだ記憶があります。
今回もまたそこらの記述は理解が大変でしたいやごめんなさい理解できませんでした。
また涙香の生涯、連珠のこと、
また彼の作ったとされるいろはの数々の解説や暗号解読の過程を読んでいると、
高木彬光氏の「成吉思汗の秘密」や「邪馬台国の秘密」を思い起こしました。
もちろんこちらの諸作も社会科テストでひとけた台の点数を誇ったわたしには
チンプンカンプンでありましたわけで。

そんなわたしですが、それでも本作には圧倒されました。
いやあ見事です。
よくこんないろはのパノラマを築き上げたものです。
殺人事件よりも暗号解読にほとんどの頁が割かれてますが、
その部分があまりにもエキサイティングなので納得。

大作、労作、奇作、間違いなくミステリの歴史に残る傑作です。
牧場智久は天才ですが、作者もまた天才であると思いました。
装丁が立派なのと、巻末に詳細な著作リストが付されてるのもポイント高し。

そうそう、黒岩涙香の著作は何十年も昔に別冊幻影城に「幽霊塔」、「無惨」、
「紳士のゆくえ」が収録されたのを所有しておったのですが、
むつかしい文体に恐れをなし、いまだ涙香の作品に触れたことがないのです。
ごめんなさい。
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