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野呂邦暢氏は、1980年に42歳の若さで亡くなられた、
長崎県生まれの芥川賞作家です。

私が高校生のころ、毎月とっておりました学習雑誌
(旺文社の高一時代とか蛍雪時代とかああゆう雑誌なのですが、
どの雑誌だったかは失念。今回ちらっとググッたのですが、不明)
に「文彦のたたかい」という野呂氏の青春小説が連載されておりました。

これを毎月気に入って読んでまして、
後に集英社文庫コバルト・シリーズで文庫本化された時も即購入。

そしてしばらくして、同じコバルトから「水瓶座の少女」が刊行されました。

この「水瓶座の少女」、ドラッグやらセックスやら、
当時の私にはいささかまぶしい内容ではありましたが、登場人物の一人が愛聴する、
セザール・フランクのヴァイオリン・ソナタという曲に興味を覚え、
レコードを買ってみたのでした。

ダヴィッド・オイストラフの演奏。ピアノ伴奏はリヒテル。

わかりにくい曲とは思わなかったけど、
退廃的な暗い曲だなあという印象も受けたものです。

フランクを更に聴こうと思い、彼のひとつしかない交響曲ニ短調、交響詩、室内楽など、
国内盤レコードで手に入るものを次々に聴きました。

結局、ヴァイオリン・ソナタと交響曲はお気に入りになりましたが、
他の曲は今に至るもよくわかりません。

さて、フランクのヴァイオリン・ソナタは野呂氏自身の思い入れの曲でありました。

彼はエッセイ集「小さな町にて」(1982年、文藝春秋刊)で、
名曲喫茶にてフランクのソナタを初めて聴いたときのことをこう述べておられます。

『チャイコフスキー、ブラームス、パガニーニ、ベートーヴェンなど
私がそれまでくり返し聴いて飽きが来た音楽とはまるでちがっていた。
精密に組み立てられた分子構造の模型にそれは似ていた。』

彼は曲が終わるやいなやリクエストをし、
再びその曲がかかるまで二時間以上待ったそうです。

『性的な陶酔に近い官能的な歓びを味わった。』

ともあります。

計算すると1950年代の半ばくらいのことで、それからしばらくして、彼は自衛隊に入隊、
後年その時の経験をもとに執筆した「草のつるぎ」で芥川賞を受賞することになります。

というわけで、野呂氏がフランクのヴァイオリン・ソナタに魂を揺さぶられたおかげで、
彼の小説を通じ私もこの曲を知ることができました。

ちなみに、私が好きなこの曲の演奏は、
ムターのベルリン・ライヴとギトリス/アルゲリッチ盤であります。
ついでに交響曲ではクレンペラーの指揮した雄こんな演奏が好み。
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06/20|Book(文芸)コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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