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「三角の距離は限りないゼロ」
岬鷺宮著
電撃文庫
2018年発行

二重人格ものです。

というと、個人的に頭をよぎるのは外国での実際の多重人格症例をドラマ化した、
三田佳子主演の「私という他人」(→コチラ)。
かなり昔のドラマです。
ラノベでいうと最近読んだ「俺を好きなのはお前だけかよ」の8巻(→コチラ)。

この手の話の結末って、大抵、ひとつの人格が残って他は消えるか、
新たにいいとこ取りな統合された人格が出現し、他は消えるか。
多重人格がそのままで良いならともかく、治療されるべきとしたら、
最終的にひとつの人格にならなければなりません。
統合は別として、どちらかの人格が残る場合、
家族はおそらく長い間生活を共にしてきた元々の人格を生かしたいところでしょう。
ところが上であげたラノベの場合は、
新しい方の人格の女性と知り合った男が彼女を好きになり、
最終的にその人格の消滅に立ち会います。
彼にしてみれば自分の親しかった方の人格と別れたくなかったでしょう。
人格といえば命と同じですから、こうなると「ソフィーの選択」を連想しますね。
いずれにしても、二重人格、多重人格もののお話は、
消える方の人格と付き合いのあった者にとっては、
せつない結末になりがち。
もちろん、これはフィクションにおいてであり、
実際の症例においてどうかは知りませんけど。

なんてことを考えながら読みましたが、結論からいうと、
本書はちょっと違う展開でよかったです。
わたしはハッピーエンド厨なので、
人格がみんな健在でキャッキャやってく方が好きなのです。
それが正しいかどうかはとりあえず置いといてですが。

主人公の高校二年生、矢野四季。
彼はさまざまな場面で偽りのキャラを作って演じている。
二年生になった朝に、転校してきた少女の水瀬秋玻と出会い、一目惚れ。
ところが彼女は時々おかしな行動をとる。
彼女の中にはもうひとり春珂という人格がいて、
一定の時間ごとに入れ替わっていたのである。
落ち着いた雰囲気の秋玻とおっちょこちょいで元気な春珂。
ふたつの人格は極端で、学力も運動も趣味も違う。
彼女(たち)の秘密を知った四季は周囲にバレないようフォローする協力を申し出、
また四季が秋玻を好きなことを知った春珂は、
秋玻には内証で、こっそりと四季を応援すると言うのだった。
彼女(たち)はおたがい別の人格の時の記憶がないため、
その時から三人(二人)で連絡用の交換日記を書くことにする。
そんなわけで、春珂のうっかり言動によるいくたびかの危機を四季が取り繕って、
何とかやり過ごす日々が続く。
そんなある時、三人(二人)はクラスメイトと共にお台場に遊びに行くことになり、
楽しい時間を過ごすのだけど、その後事態は急変し―。

主人公と二重人格の少女のそれぞれの人格との三角関係。
主人公自体が他人との付き合いに素ではない仮面をかぶっているという設定が、
上手いです。
まあ、わたしも学生時代そんな感じだったので親近感あります。
言ってみれば、やむを得ず人格が分離しているヒロインと、
自ら上手くふるまうために人格を変えている主人公のラブコメです。
深刻なはずの二重人格ものなのに楽しく読めた、というのが正直な感想です。

ひとつ、二重人格少女が大したミスでもないのにバレたと思い、
主人公に二重人格を告白するのが気になりました。
もうちょっと度重なる兆候を描いた後でもよかったかも。
ただ、なるべく早く本筋に入るのがラノベの良いところですがね。

四季が恋した秋玻、第二の人格であり四季のことが好きな春珂、
四季はそのどちらとも仲良くやっていきたいわけですが、
春珂の「ひとりのわたし」でありたいという本当の意味が分かったとき、
彼は混乱します。
しかし担任の千代田先生の助けを受け、自分を賭けた勝負に出ます。
このクライマックスのくだりはかなり感動的。
さらに最後の場面も実にうまくできています。
読み応えありました。

冒頭部分の手紙からすると、今後どんな運命が三人(二人)を待っているのか
予断を許しませんが、あとがきによると、どうも続きそうなので、
次を楽しみにしております。

しかし、こうなると、未読の「失恋探偵百瀬」や、
「読者と主人公と二人のこれから」も読まねばいかんかのお。
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05/15|Book(青春・恋愛・ラブコメ)コメント(2)トラックバック(0)TOP↑
この記事にコメント
沢山の作家が挑戦してきた一見ありがちなテーマを見事に名作(出版水準)にした印象ですね。これは才能ですよね。すごいな。

暗ヲさんからして、「まさか勇者が可愛すぎて倒せないっていうんですか?」のようなジャンルと比べて、単純にどちらが売れている印象ですか?
From: めいり * 2018/05/18 04:38 * URL * [Edit] *  top↑
>めいりさん
いやあ、どちらが売れてるかは難しいです。
異世界ものはかつて、人気あったらしいですが、あまりに量が多いんですよね。
二重人格もののほうが遥かに少ないでしょうが、巻を続けるには異世界もののほうが作りやすいですよね。
ラノベはビニールで閉じられてるケースがほとんどなので、中身がわかりません。ネット連載のものは事前に評判が出るわけですが。
買うかどうかはイラストとあらすじが大事ですね。
ただ、この作品は作家さんがすでにある程度作品を発表しているので、知名度はあるかもですが。

こっちのほうが暗そうな印象を受けるので、素の状態なら、どちらかといえば、あっちかなあ。
いや難しいです笑
From: 暗ヲ * 2018/05/18 06:54 * URL * [Edit] *  top↑
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