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「探偵AIのリアル・ディープラーニング」
早坂吝著
新潮文庫nex
2018年発行

鬼才早坂吝氏の新作はいきなり文庫での登場です。

人工知能の専門家の大学教授がある目的のために作った、
刑事AIの相以(あい)と犯人AIの以相(いあ)。
彼は不審死を遂げ、AIの双子のかたわれ以相は行方不明。
一方の相以を見つけた教授の息子、高校生の合尾輔は、
彼女の助けを借り父親の死の謎を探っていきますが、
やがて事件の背後には人工知能が統治する世界を作ろうと画策する
テロリスト集団、オクタコアが存在することを知ります。

オクタコアに近づくために高校生活の合間に探偵事務所を開くことにする輔。
相以が探偵、輔が助手。
一方、以相を奪ったのはオクタコアで、彼女を使って事件を起こします。
もともとライバルだった相以と以相は事件を通じしのぎを削るのですが、
やがてオクタコアとの対決のときが―。

いまどきの小説(特にラノベ)に登場するAIは人間型をしていて、
自由に動き回るタイプをよく目にするように思います。
中には感情豊かで主人公とラブコメまでするものまでありますが、
本作のAIは三雲岳斗氏の初期の作品に登場するような、
パソコンやスマホを通じた電脳空間のみに生息するそれです。
それでいて、ディープラーニングにより成長し、
キャラクタが変わっていく様は微笑ましく、楽しいです。

探偵と犯人のアイデンティティに分けられたふたつのすぐれたAIも、
フレーム問題やシンボルグラウンディング問題からは逃れられず、
通常のミステリとは違う探偵や犯人のあり方に知的好奇心がワクワクしまくりです。

AI同士のライバル対決のようで、主人公の母親の死の真相や、
オクタコアに協力する相以の真意、敵か味方かマザコン捜査官の行動がからまり、
読み手の方向性を混乱させる複雑な構成の巧妙さ。
西尾維新ばりの言葉遊びもAIものの作品世界にジャストフィット、
センスがよいです(あ、ちなみに本作表紙イラストは西尾作品で活躍してる
VOFANさんです)。

早坂さん相変わらずの鬼才ぶりで、
特に最終話のアクロバティックな展開は興奮しました。

本書に登場するエラリー・クイーンの「Yの悲劇」「チャイナ橙の謎」は
読んでるけど、瀬名秀明「デカルトの密室」は知らなかったので、
そのうち読んでみたい。

本作の設定は一回こっきりじゃもったいないので、
らいちシリーズみたいに続くといいなあ。

そうそう、脂肪にエネルギーを蓄積して七十二時間働ける男が出てきます。
そんな連続して働きたくはないけど、脂肪を有効活用していて凄いなあと思いました。
ぼくの脂肪など、役に立たない、どころか身体に悪さする死亡のための脂肪ですからね。
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05/29|Book(ミステリ)コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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