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「合邦の密室」
稲羽白菟著
原書房
2018年発行

第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞準優秀作。

物語はある奇妙な手記から始まります。
そこにはある人物が母親に毒を飲まされたこと、
そのせいで自分の顔が崩れたこと、
母親が父親を殺し、その生首を自分の寝ている部屋に持ち込んだところ、
首が浮かび上がってやがて消えてしまったこと、が書かれていました。
その手記の書かれたノートを発見した文楽太夫の長谷太夫は、
相方である文楽三味線の冨澤弦二郎に相談します。
やがて人形方の青年が失踪したこともあり、
弦二郎は友人の劇評家、海神惣右介に話をしたところ、
彼は44年ぶりに葦船島で行われる文楽巡業に同行することになります。
実はその島では1968年に、
太夫と三味線の二人が死体で発見された事件が起こっていたのです。
島に渡った文楽一行ですが、やがてスタッフの一人が死体となって…。

うーん、ややこしいストーリーでうまくまとめられませんが、
ともかく、複雑怪奇なお話が展開されます。

過去に起きた事件の真実とは。
正体不明の三味線弾きの正体は何者か。
スタッフはどのようにして密室から抜け出して死体となったか。
島に現れた謎の人形の正体は。
手記に書かれていたことは現実の出来事なのか。

日本の伝統芸能の世界を舞台にしたミステリということで、
栗本薫さんの「絃の聖域」を思い浮かべました。
また奇妙な手記から始まる作品としては島田荘司氏の「眩暈」を想起。
ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の最終選考委員は島田荘司氏ですが、
そのためもあってか、この作品には随所に島田氏の影響が見られます。

現代における人死にが中盤になるまで起きないこと、過去の事件に比べ、
現代のそれが平凡なこと、文楽という男の世界を描いているためか、
若い女性が編集者のひとりのみ、それもあまり登場しないこと、等、
気になる点もありますが、馴染みのない文楽の世界を細かく描いてくれてること、
島で登場する、惣右介に協力するある青年を観察者としてうまく扱っていること、
古き佳き探偵小説にあったような人間の情を感動的に描いていること、
68年当時の世相を描くことで社会派の一面も持っていること、
等々大いに堪能しました。

作者の今後の活躍に期待するものです。
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06/20|Book(ミステリ)コメント(2)トラックバック(0)TOP↑
この記事にコメント
いつも福ミスを応援くださり、ありがとうございます。
From: めいり * 2018/06/22 01:14 * URL * [Edit] *  top↑
Re: タイトルなし
>めいりさん
いえいえ。
いつもというわけではないですが。
面白そうなのは読まなくては笑
福ミス意欲作が多いですからねー。
昔風な本格は大好物です♪
From: 暗ヲ * 2018/06/22 01:27 * URL * [Edit] *  top↑
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