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「瑠璃色の一室」
明利英司著
書肆侃侃房
2018年発行

明利英司氏の新作。
今回はホラー要素のない本格。

内容は帯で中山七里氏が書かれているように、
ホワット・ダニット(何が起きているのか?)で、
ミステリとしては少し珍しい趣向と思います。

精神科の患者で、ある男への復讐を目論み病室を抜け出し動き回る鈴木真里、
イケメンで優秀な警察官の竹内秋人、
精神科病棟の同室の女性の行方を心配し、行動する桃井沙奈、
三者の視線による物語が一章ずつ順番に語られていきます。

ホームレスが殺された事件を捜査する警察官が、
少しずつ犯人に迫っていく描写は面白さたっぷりでドキドキですが、
それでいて目撃情報が錯綜するところはリアリティたっぷり。
目撃証言というものは、太古のミュンスターベルヒの実験を持ち出すまでもなく、
複数の証言は一致しないであたりまえ、
人間の視方や記憶などすごくいいかげんなものと考えていますが、
どうもサスペンスドラマや一般的な警察小説など、ややこしさを避けるためか、
尺や頁数や冗長になることを避けてか、
情報を絶対的なものとして進めるケースが多いもので、
この点、本作ではやたら新鮮に感じました。

…と思いながら読み進めていたのですが、
実はそのちぐはぐさが真相に結びつくという、凝った構成はさすが本作ミステリ。
読者をミスリーディングさせる手口が見事。
この作者らしい会話も楽しく、わくわくしながら読み終えました。
何が起きたのか―?
クライマックスで、それまでばらまかれていた様々なパーツが収束していき、
浮かび上がる意外な真相は、唖然とするものでした。

目次を見て、○○トリックが使われていそうだな、と思っていたのですが、
これはそれよりもさらに一歩進んだ、
うーん、やっぱり一言で言えばホワット・ダニットに尽きるのでしょうね。

脇役の警察官の倉田や探偵の氷上がいい味を出しているのも、
この作者らしく物語の懐を広く魅力的にしています。
また、物語の底に流れる重要なキーワードである瑠璃色を見事に表現した、
げみさんの表紙イラストも大変素晴らしい。

本格ミステリの醍醐味を堪能いたしました。
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08/06|Book(ミステリ)コメント(2)トラックバック(0)TOP↑
この記事にコメント
いつもいつも立派な感想を書いていただき、ありがとうございます。なかなかボリュームのある長編なのに、早々に読んでいただけて嬉しいです。
今回の作品は、私がたしか26歳のとき、生まれてはじめて書いたミステリー小説なのです。ようやく出版する運びとなり、喜んでいます。そして思い入れの強い本作に、このような有り難い言葉をいただき、感慨深いです。
この感想を何回も読み返していれば、辛いときでもなんとかなりそうです。笑

次の新刊も一日でもはやく刊行できるように頑張ります。
From: めいり * 2018/08/07 00:12 * URL * [Edit] *  top↑
Re: タイトルなし
>めいりさん
昨日(あ、もうおとといだ笑)ちょっとググっていたら、このミスの過去の選考作として、出てきましたんで、ちょっと前の作品かな、とは思いました。
長編ですが、読み応えあって楽しかったです。
ミステリとしてもすごく面白かった。
出版不況とはいえ、よく今まで埋もれてましたね。
今後ももちろん期待しています。
From: 暗ヲ * 2018/08/07 00:26 * URL * [Edit] *  top↑
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