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「元年春之祭」
陸秋槎著
稲村文吾訳
早川書房
2018年発行

金沢在住の中国人作家、陸秋槎氏の長編本格ミステリが、
なんとハヤカワ・ポケミスで登場しました。

原書には「巫女主義殺人事件」という、
本書の根幹を成す重要なテーマを示す副題が付いていたようです。
なおタイトルの「元年春之祭」は「春秋」という歴史書の冒頭と、
ストラヴィンスキー「春の祭典」を組み合わせたと、
著者あとがきに書かれています。

天漢元年(紀元前100年)の中国。
観一族の祭儀のため、滞在していた豪族の娘於陵葵は、
知り合ったばかりの観露申から、
4年前に起こった彼女の伯父一家惨殺事件の詳細を聞き興味を持ちます。
しかし、なんということか、於陵葵の逗留中に、
再び連続殺人事件の幕が開くのでした―。

中国における古典文献や宗教関係のペダンティックな知識が
ふんだんに織り込まれて、現代の日本人からすると、
読みづらい点があります。
その部分は読み飛ばす―のはまずいのでしが、斜め読みしても良いでしょう。
ミステリとしての流れに関連していないとも言えないので(笑
読者への挑戦が二度も組み込まれる本格仕様です。

観家の主人に頼まれ、事件の調査をする於陵葵は、
若く不遜なところもある少女ですが、博覧強記、
頭脳明晰で探偵役にふさわしい存在です。
対する観露申は比べるとおとなしめで、SとMのような対比がなされています。
さらに於陵葵の侍女である小休という、主人に尽くしまくる少女も含め、
そこはかとない百合フレーバーが漂います。

そんなキャラクターたちの魅力も素敵なのですが、
なんといっても殺人事件の驚嘆すべき犯罪動機は前代未聞。
正直現代の日本人からすると、理解しにくいでしょう。
しかしロジカルなトリックは素晴らしく、日本の新本格の影響を受け、
日本の現代ミステリに精通している著者の面目躍如たる出来映えです。
特に真相一歩手前の推理など、新本格テイストたっぷりで唸りたくなりました。

とはいうものの、本書の魅力はトリックや犯罪動機ばかりではなく、
いや、むしろせつなく悲しい物語の描かれ方にこそあるように思います。
つまりは読後感は満足いっぱいなのであります。
今度は著者の現代ものも読んでみたい。
これからもご執筆ならびに翻訳紹介されることを切に望みます。
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09/07|Book(ミステリ)コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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